第４８８号／自分の学んだものを意識的に手放して、早く陳腐化させていくことが成長。

以前、まだ私が若い頃、
私の尊敬している
武道の強い先輩で、
自分の技術を惜しげもなく、
教えてくれる方がいました。

あるとき、
「せっかく自分で苦労して
長い間、鍛錬して自分のものにして
学んだものを、
どうしてそんなに
他人に教えてくださるのですか？
私だったら、いやらしい話、
簡単に教えたくないと思ってしまうのですが」
と聞いてみました。


先輩は、
「なんだ、そんなことか」という顔をして、
まっすぐ私の目を見て、

「そんなシケた考え方をしていると、
間違いなく成長しない。

自分の今、持っているものを
他人に出し切ってしまえば、
自分の引き出しは、
空になっていくから、
自分でまた学ぼうとしていくだろ？

人は、誰もが怠け者なので、
自分がたくさん手にしているときは、
学ぼうという切迫感がうすれていく。

だから常に出し切ってしまったほうが、
いやでも成長していくんだぞ。

自分の引き出しは、
空になっていくといったが、
実際は空になっていなくて、
それはきちんと自分の財産になっているんだよ。

だから尾又くんも、
自分の学んだものを抱え込むのではなく、
どんどん手放していくんだ。

結果的にそれがバージョンアップして
自分に返ってきて、
間違いなく成長するから。

もちろんやる気のない奴には、
そんなことさえ教えないけどね」

と。


それを聞いて、
「武道の技術だけに限らず、
自分の学んだこと、
勉強したことも全部そうだなぁ」と
改めて心に刻みました。

私のロールモデルにしている方のセミナーに
参加させていただいた時も、

「自分の学んだものを
意識的に手放して、
早く陳腐化させていくことが
成長していくこと」

と全く同じことを
おっしゃっていたからです。


過去の蓄積で生きるのではなく、
その上にどんどん積み上げて、
学んだものは、
あえて早く意識的に手放し、
陳腐化させて、
自分を進化させていく。


どんな分野でも、
ハイパフォーマーな方々は、
見ている景色が違います。
そこを見ているからこその言葉は、
一般的には、どこかで聞いたことがある
言葉であっても、
やっぱり刺さり方が違う。

そんな言葉を拾い集めて、
自分のものにしていくこと。
それも気づかせていただいた方々に対する
恩返しか、と。


自戒を込めて。